「確かお茶は出ないのだろう?作って持って行くか」 ラフな格好の最愛の人が食洗器に食器などを入れていた祐樹に聞いて来た。 五月は比較的雨の少ない季節だけれども天気予報では雨マークだったので内心は気を揉んでいたのだけれども、気象庁だかの予想よりは早く雨雲が通
目の前の精緻なフルートグラスからはシャンパンの細かい泡が立ち上っている。そして真っ赤に熟した大きな苺を口に入れるとシャンパンの味が一層引き立つ。 その向かいには最愛の人が大輪の大きな花を彷彿とさせる笑みを浮かべている。それだけで酩酊するような気持ちにな
部屋に入ると、智伸は缶コーヒーの残りを飲み干して座卓に突っ伏した。ゆっくりと息を吐きだす音が耳に届いた。 よほど疲れているのか、そのまま動かないので優羽はその背をやわらかくさすった。こんなことしかできないなんてという思いと、いまはまだこれができるという喜びが胸のうちでせめぎ合う。いつか、触れられなくなる。永遠に。 智伸にそっと差し出すように告げた。「俺なら、だいじょうぶだから。だいじょうぶじゃな...
月夜の猫-BL小説です 春雷32 BL小説 「そうか」 工藤はコーヒーを飲んでから、また徐に口を開いた。 「まあ、それはそれだ。お前の好きにしたらいいが、やはりそろそろお前の待遇的なものも考えねばならないだろう。取締役でどうだ? 形的には三月の株主総会での決定だ」 「取締役? 俺がですか?」 「ちっぽけな会社で
聖名の変化に戸惑いつつも、俺はいつも通り、部屋着で布団に入った。聖名の方も部屋着だ。布団に入ると意外にも聖名は俺には背を向けて灯りを消すと無言だった。あれ?合宿を提案してきたのはお前の方だったよな?(疲れて、話すのが面倒になったのかな)不思議なことに、俺の視線を感じて身を固くしたようにも見えて、俺は声をかけるのもやめ、俺の方も迷惑にならないように彼に背を向け、眠りについた。…気がつけば、朝だった。トイレの付き添いには起こされなかったようだ。隣を見ると、もう聖名の布団は畳まれていた。驚いて辺りを見まわすと、聖名はキッチンの丸椅子に座り、あらぬ方を見てぼーっとしていた。何と声をかけたものか迷った。やっぱり二人暮らしは憂うつなのかな、とまた思えたからだ。小説「傾国のラヴァーズ」その40・朝はけだるくて
最愛の人は赤い花びらを手袋したままで器用に摘んでいる。一抹の罪悪感を浮かべているように見えるのはきっと花の命を奪っているという罪悪感めいたものがあるのだろう。同じ花でも――いや寒椿が花屋に売っているかどうかまでは知らないが――手で摘むのと買うのでは最愛
場所を変えて話したいと伝えると、バフォメットは一瞬怪訝そうな表情になったものの快く頷いてくれた。 誘ってるようだなどと思わなかったが、ベルフェゴールとしては一見「お前ごときがこの俺を? おととい来な」くらい言いそうな見た目でもあるなとは思
月夜の猫-BL小説です 春雷31 BL小説 「アスカさんが何か?」 逆に秋山は聞き返した。 「いや、いいんだ。お姉さんとは連絡を取っているのか?」 工藤が話を変えると、秋山はちょっと逡巡する。 「ええ、まあ、姉自身もうちを嫌ってさっさと結婚して家を離れた人ですから、ほんのたまに連絡をくれます」 「確か弟がいたな
「戻ろうか」という智伸の言葉で来た道を戻る。自販機でコーヒーを買って、飲みながら歩いた。智伸は甘いコーヒーが好きで、優羽は無糖。 変わらないな、と思う。なにが変わらないのだろうと思ったところで、ふっと高校時代を思い出す。 こんなふうに、いつも一緒に登下校していた。ただ、ふたりとも決して財布に余裕があったわけではなかったから、自販機は使わずに、飲みものは事前に準備するというのが暗黙の了解だった。駅...
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ34 BL小説 一番、自然だったのはやさかで会った栗色のふわっとした髪と品のいい夏のドレスに身を包んでいた、大きな目が印象的な彼女だろう。 ん? てことは、彼女、やっぱ俺の後をつけてた? ってか、俺のこと知っとるいうことか? 千雪は頭の中でそんなことを思いめぐらせながら、
「野郎ども、天国の門にキッスしな!」 友樹が甘いロリ声を作り、自身の操るキャラクター、ミルハニの決めセリフを叫んだ。 「うお~ミルハニ総攻撃~」 キャラチェンジしてからどうにも勝てなくなったらしい真島の焦った声を聞いて、灰谷は再びスマホから顔を上げた。
「野郎ども、天国の門にキッスしな!」 友樹が甘いロリ声を作り、自身の操るキャラクター、ミルハニの決めセリフを叫んだ。 「うお~ミルハニ総攻撃~」 キャラチェンジしてからどうにも勝てなくなったらしい真島の焦った声を聞いて、灰谷は再びスマホから顔を上げた。
その日の夕食タイム。なぜか目の前にはニコニコ顔をしている店長が座ってくる。「あの」「雅君、よく頑張ってるね」「立ち仕事はしんどいですが、付加価値があり楽しいです」「これ、2週間分のバイト料ね」「ありがとうございます!」金額を確認して受取のサインをする。店長はニコニコ顔で言ってくる。「どう? やっていけそう?」「はい、やっていけます」「それなら、もう1枚」そう言って、ある紙を置いてくれる。「それを読...
駅の周辺は想像していたよりも栄えていて、商店と住宅が立ち並ぶ通りを抜けると煙突から煙を吐き出している工場がいくつか点在していた。それを過ぎるとひたすら牧草地が広がっていて、いまはなだらかな丘を登っている。 「ハニー、もしかして緊張しているのかい?」 そう尋ねられて、アンジェラは隣に座るクリスに目を向けた。窓の外は冷たい風がヒューヒューと魔女の悲鳴のような音を立てている。 「少しだけ」アンジェラは正直に答えた。生まれてこの方、こんな遠くまで来たのは初めてなのだから仕方がない。自分ではもう少し気楽に臨める旅だと思っていたけど、駅で出迎えたクラーケンを見たときその考えは間違っていたことに気づかされた。 今回の問題が起きた一因には、クリスがラムズデンへ行くのを先延ばしにしていたこともある。それは紛れもなくアンジェラのせいで、おそらく問題が起きなければまだもう少し先になってい..
5/1の10時半ごろにパスワードのお問合せをいただいたM様。メールアドレスが間違っているようで、返信ができません。お手数ですが、問い合わせフォームより再送をお願いいたします。
番外編27:十勝【慇懃無礼ですがなにか?(著:とうにゅう)】読了!
十勝「……っふー。やっと読み終わった。つ、疲れた。ネット小説一つ読むのに、こんなに疲れるなんて」【十勝君が疲れ果ててる理由!】十勝は「慇懃無礼」を読みながら、大豆と茂木のオフィスR18場面が、何度も脳裏に過って、その度に手が止まったよ。手を
数日後の夕方。 閉店したハーバルに鍵を掛け、帰ろうと歩き出した時 イツキは久しぶりに三浦を見掛けた。 珍しく店を開けていたらしい。 自分の店の前で常連の年寄りと立ち話をし、じゃあな、と見送り、 振り返りざまにイツキと目が合う。 あまり関わらない方が良い、というのは解っているのだが 気にならないといえば嘘になる。 とりあえずぺこりと頭を下げ、お…
こみ上げる感情の波に、瞼のふちが赤くなっていくのがわかる。みっともなく泣いてしまいそうだった。涙腺というのはいちど緩むと緩みっぱなしになるらしい。 せわしないまばたきを繰り返して、必死に涙を押し戻す。収まりきらずにすこしだけこぼれた優羽の涙に智伸は気がつかないふりをしてくれた。すこしだけゆがんだ声をようやく優羽は絞り出した。ふたりのあいだに、ぽたりとその声が転がる。「これから先、だれに出会っても...
司書である磯浦は、浦島太郎のラストに納得できずにいた。閉館間際。手にしていた絵本が光り出し…気づけば『貴方様に助けられた』と礼を言う海亀、亀之助の背に乗っているではないか。彼に案内されたのは、主も家臣も男色である“竜宮北別館”。自身がこの世界に呼び寄せられたのは、恋人がいないまま無精卵を産み続ける亀之助のせいであったことを知り――!?
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